スクランブルエッグ

私による私の為の生存記録

新しい風

Mリーグ2022-2023お疲れさまでした。
今年は雷電と『本田朋広』選手の変革の話をする。

 

 

・本田朋広選手は真の『Mリーガー』

何よりルックス。次に性格。更に雀力。
彼は雀力を見染められて選ばれた選手なので、監督的にもキャラクター性は二の次だったと思っているのだが今期化けに化けた。
(元々風林火山のオーディションで彼の実力は我々に証明されていた)
眉目秀麗で麻雀の成績があって、愛嬌と気さくな性格で天然ボケをかましてくる。
蓋を開けてみれば彼はMリーガーとして、つまり『麻雀を民衆に広めていく為のコンテンツ』として天才的な素質を持っていた。
かくいう私も、彼に財布の紐を奪われ初めて麻雀サブスク(アベマプレミアム以外)に課金をした。雷電のPVも買った。来期はガイドブックにも手を出そうと考えている。
本田選手は、普段は甘いマスクと天然な挙動で周りを虜にし、麻雀中は超絶クールで格好いい。このギャップ。
雷電は図らずとんでもない男を手に入れたのだ。

 

・『TEAM雷電

雷電はずっと1+2人だったように思う。チームじゃなくて個人の力を足し算した関係。瀬戸熊さんと黒沢さんは掛け合いでは良いコンビだったけれど、試合になると支え合う個人に分かれてしまっていたように見えた。
戦術面で柔軟性が足りておらず、面前型且つ個性的な選手を集めてしまったので軽い仕掛けをすると目立ってしまう。
そこに麻雀スタイルの異なる本田選手が加わったことで、非常に戦いやすくなった。黒沢さんは最も爆発力があるが波がある。彼女の力を最大に生かすためには起爆するまでの時間を稼ぐ必要があり、今期の雷電はそれが出来ていた。
結果として、黒沢さんと本田選手が自由に打ち、それを精神的にもポイント的にも支えつつここ一番で守ってくれる瀬戸熊さんというチーム戦術が生まれた。
瀬戸熊さんは責任感が強くて周りのことを深く考えているタイプなので、どうしてもチーム状況を優先してしまう(無意識に自分の麻雀を打てない)ところがあるように見えた。恐らくそれが今の彼の戦績につながっている。
瀬戸熊さんがMリーガーとして自身と麻雀に折り合いをつけられたなら、良い意味で怖い選手になると思う。
もしこの先そういう風に変わっていったなら、それは間違いなく本田選手の影響のはず。守るべきものが1つ増えたんだよね。

メディア面の話をすると
今期の本田選手が成績を出し、素直に話せるようになって、それを見た瀬戸熊さんが彼を『売っていく』方向に舵を大きく切って(これは当初、瀬戸熊さんが黒沢さんにしたことと一緒)、彼はともくんに成った。
4人でいる時に、ムードメーカーでみんなを笑顔にしてくれる末っ子(?)の本田選手を兄貴分2人が躾し、隣で楽しそうに大笑いする黒沢さん、という家族のような構図が定着し凄く親しみやすくなった。
いずれにせよ本田選手が加わって、お互いがお互いを信じ高め合い、彼らは漸くTEAM RAIDEN/雷電に成れたのだ。


・本田選手の麻雀

まず所作が綺麗ですよね。強打しない。雷電は入り込むとバンバン言わせる選手が多いので、動作が対局中の冷静さを際立てていて最高に素敵。(個人的には極稀にツモにぐいぐい力が入っているのも好き)
牌の上下も比較的揃えるタイプで、Mリーグでは牌をカメラに見せることを特に意識していて(他の放送対局と微妙に動きが違う)視聴者のことを考えているのが見て取れる。
対局中、瀬戸熊さんは熱くて黒沢さんは怖いので、バランスを取るかのような本田選手のクールな表情は非常に魅力的。

 

雷電の麻雀は面白い。
和了が面白いのが瀬戸熊さん、手筋が面白いのが黒沢さん、そして山と引きが面白いのが本田選手。解説の人達もよく笑いが堪えきれなくなってますよね。
他家すら操作する悪魔的な鳴きと、ゾーンに入ったときの恐ろしいまでの爆発的なツモで人を魅了する。
手筋と読みで視聴者を唸らせる麻雀プロは数いれど、牌山で楽しませてくれるMリーガーは彼しかいないと思う。本田選手がツモる度にワクワクしてしまう。
あと巧妙な印象操作で、鳴き麻雀打ってると思われがちですが、バランス寄りの面前型な気がする。

 

本田選手は感覚的な打ち手で、彼自身も(一見)異常な麻雀を打っている自覚がありそうなので、だからこそ感覚と自信を大切にする打ち手が集まる雷電に選ばれて本当に良かったと思う。
蛇足ですが、持ち味が周りに浸透するのに時間がかかるのは黒沢さんに似ている。そして自身のペースに持ち込んで勝利を掴むという根幹は瀬戸熊さんと似ている。
本田選手に実力があるのは勿論だが、それ以上に伸びしろがあるように感じる。
巡り合ったトッププロから指導を受けて来期どれだけ強くなって帰ってくるのか楽しみでなりません。

 

 

・印象に残っている対局

①10/18第1試合
今期初めてトップを取った試合。
東場の親で一発ツモの6000オールを決めるんですが、あの時本当に嬉しそうな表情していたのが印象的。
それを皮切りに、有効牌が押し寄せてくる。麻雀の神様は彼の意思に応えてくれたんだと思うと感涙に咽ぶ。
特に、南場でシャンポンリーチをかけて結果的に喰い流されてしまったけれど、和了牌が一発ツモに””居た””こと。初めて自身の麻雀を解放したMリーグの試合でトップを取ってしまったこと。何度視ても「この人、本物だな」ってなる。
解説の優さんも驚きの声を禁じえなかったのを覚えている。
個人的にはこの日の解説が、本田選手の本来のスタイルを知っている優さんだったのも僥倖で、松嶋さんが追えていない部分を補ってくれていた。
解説中に松嶋さんが良い意味で「とんでもないことになりそうですね!」みたいな発言をするんですが、この後本当にとんでもないことになった記念すべき試合なので、是非見返してほしい。

②12/6 第1試合
テンパイ形を伏せてトップを取ったスーパープレイで盛り上がり、今でも皆忘れられない試合。このトップで彼の評価はかなり変わったのではないかと思う。
伏せる選択を貫いたのは何より見事ではあったが、ではなぜ本田選手があの局面で伏せられたのかを考えた時、皮肉にも今迄が在ったからではないかと思いました。
それまでの私達は『雷電の選手』に対し面前高打点型というレッテルを貼っていた。
昨シーズンは成績が芳しくなかったため批判され、今シーズンは勝っているのに批判されて彼の心は慣れてしまったんだと思う。でもそれは悪いことばかりではなくて。
元々麻雀に関しては自分を信じる力が強いタイプだけれど、だからこそあの選択を迷わなかったんだと思っている。
何よりこのプレイを多井さんの前でやったことが僥倖ですし、「ともくん」って呼び名がファンに一気に広まったのも多井さんの解説のおかげ。

③5/12第2試合
親倍満をツモってトップになったファイナルシーズンの試合。
伊達さんが44000点で本田選手は30000点弱で、伊達さんの親は無いとはいえ6000オールだとちょっとリードが心許ないなという局面での8000オールを見て本当に凄いなぁと。麻雀で必要な時に運を出力できるってもう才能じゃないか。
別日の試合の話にはなるのですが、ファンからきたスパチャに対して萩原さんが
「いやアイツはもう喝入ってます。麻雀の前だけは……」
というような返しをするのを見て、『本田選手の麻雀に対する信頼』を感じました。


④5/18第2試合
これは瀬戸熊選手が出場した試合。見せ牌に対する私の考えの話をどうしても文章にしたためたいので書くことにした。
第一に、私は瀬戸熊選手のポリシーには大賛成でフェアプレー精神を貫く瀬戸熊選手が一層好きになった。そもそも視聴者に文句を言われることが分かった上でのプレーだ。
問題はその後の雷電公式振り返り動画で、監督がチームでも揉めて最終的に以後は上がる決断をしたことを告げたこと。
私達は内部で何があったのかを知りえない。
ですが、正直この判断は目先の視聴者のことしか考えてないと思ってしまったし今でも許していない。
元々Mリーグは、麻雀をMリーガーという名の麻雀プロの鑑を通じてスポーツという新しい形で世間に普及させていくことを目的としていること。更にTEAM RAIDEN/雷電の公式説明文に「強さと礼儀を兼ね備え~」という文面があること。
何より、真の麻雀プロとして必要なのは雀力だけではなく麻雀観や麻雀に対する真摯な姿勢・誇りであること。
あの判断は、そういう、根幹にして一番重要な部分をを剝ぎ取ってしまったように思えてならない。
どうして一番大切な部分で選手を守ってくれないのか。非常に残念としか言いようがない。

 

 

・閉会式の話
本田選手の代表インタビューで大成功してしまったのを見て、この人これから大変だろうし来シーズンが勝負だろうなぁと強く思った。
アベマズの多井さんが松本さんに最終日を経験させたように、萩原さんも本田選手に代表挨拶を経験させたかったんだろうなぁと。トークが苦手な本田選手が、萩原さんという理想の先生がいる雷電に選ばれたことは本当に僥倖でしたし、この勉強会は萩原さんにしか出来ない。
本田選手が、観客の騒めきを乗り越えて舞台の空気を全部持っていってしまう様子は、傍から見ると危険な選択が、他家にあらゆる影響を及ぼして最終的に自身にとって良い結果となって返ってくる今期の麻雀を象徴しているように見えた。やっぱり『麻雀』って素晴らしい。
これから先本田選手がどういう風にメディア露出するとしても、麻雀だけは嘘をつかず自分らしく打ち続けてほしい。切に願う。

 

 

TEAM RAIDEN/雷電の本田朋広選手は、本当にチームに新しい風を吹かせてくれた。
雷雲を造る為には風が必要。彼の麻雀は、雷が生まれ落ちる過程を見ているようで本当に面白い。
太陽を光を浴びた風は舞い上がり、空の中で揉まれ擦れて一際大きな雲となる。
そしてより一層逞しくなって、また雷鳴のカルテットを響かせてくれるのだろう。